大判例

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東京地方裁判所 昭和40年(刑わ)3528号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔参照判例〕京都地判昭三七・六・七、下刑集四巻五、六号五一一頁

〔判決理由〕(事実)被告人は、東京都世田谷区喜多見町一〇〇番地東宝撮影所内に事務所を設け、同撮影所の照明準備の下請業を営む小田川興業の経営者であつたが、昭和四〇年七月六日及び翌七日の両日に亘り、仕事が極めて多忙であつたのに、被告人の使用人である川島洋、飯島由詮、石井誠次及び柏木務已並びに右小田川興業の下請業者である堤プロダクシヨンこと堤清人の使用人である飯塚輝彦等九名が集団で無断欠勤したため仕事に大きな支障を生じたので激昂し、

第一、右小田川興業における被告人の補佐役である佐藤久男、同従業員の世話役である萩原昭三及び同従業員で被告人の義弟である新井務と右集団欠勤の善後策を話合い、その首謀者と認められた右川島(当時二五年)にその理由を糺すと共に厳に同人を懲らしめようと相談し、暗に共同して同人に暴行脅迫を加えようと共謀の上、同年同月七日同人に対し、

(一) 神奈川県川崎市生田五、四五〇番地の被告人方居宅内において、右萩原が手拳でその顔面を殴打し、右佐藤がその頭髪を掴むようにして頭部をこづき、更に右庭先において、右新井が逃げる右川島に向けその場にあつた鉄製椅子を投げつける等共同して暴行を加え、

(二) その際右被告人方居宅内において、被告人がこの野郎、腕の一本や二本は叩き折つてやる、指をつめて謝れ等と申向け、右新井に肉切庖丁(昭和四〇年押第一、四〇七号の一)を右川島の前に投げ出させて脅迫したものである。

(公訴事実第一の脅迫行為につき暴力行為等処罰に関する法律第一条の罪の成立を認めなかつた理由)

本件公訴事実第一の如き、数人が共同して脅迫、暴行をすることを共謀し、その一人のみが脅迫をし、他が暴行をした場合、全体として暴力行為等処罰に関する法律第一条の罪が成立するか、について考えると、同条が主たる保護法益として個人的法益をもつほか、附随的な保護法益として社会不安の惹起の排除という社会的法益をもつと認められるから、その点では同条の構成要件たる脅迫及び暴行につき共通の法益があるというべきであること、本来脅迫と暴行とは、刑事学上いわゆる攻撃的な犯罪として共通性をもつと共に、実定刑事法上も一の犯罪の手段として並列して規定され共通の取扱をうけていることが多いことから考えると、同条が暴行と脅迫とを包括した暴力行為ともいうべき犯罪類似型を想定しているものであり、従つてたまたま脅迫丈けについていえば共同してなされたものでなくても他の暴行とを併せて共同暴力行為があるというべきであり、全体として(その法律構成はさて措き)同条の犯罪を構成する、という考え方にも一理がないわけではないが、同条の主たる法益と認められる個人的法益についてみれば、暴行と脅迫との間に根本的相異があることと、更に同条の文理解釈として右の説の結論のように解することは大変困難であることと考え合せると、容易に右の説に賛意を表しえない。従つて、当裁判所としては同罪の成立要件として、共同脅迫、共同暴行がなければならないと考えるので、脅迫の所為については脅迫罪の共同正犯の成立を認めるに止めた。(環直弥)

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